Column 連載

編集は愛だ。愛なんだ…。個性を出すための編集術

第3回:女性クリエイター向けウェブメディア『箱庭』が、こんなにやわらかいワケ

大野恭希(フリーウェブ編集者・メディアアドバイザー)

プロフィール

大野恭希
大野恭希

ギズモードジャパンの副編集長、2代目編集長を経験。現在はライター。プロモーション。メディア運営アドバイザー。新しいガジェットが好き。未来予測しつつメディアや社会の動きを観察するのが日課。

いつの間にか僕の中で癒やされメディアの地位を築いていたウェブメディアの『箱庭』。そこの編集長である東出 桂奈さんにメディア運営や編集ポリシーについて聞いてきました。『箱庭』のほんわか雰囲気はどんな想いから醸成されているのか感じ取ってもらえればと思います。癒やされますよ。どうぞ!

『箱庭』ができるまで

大野:はじめまして。僕の周りで『箱庭』って単語がたまに出てきて、どんな人がやってるのか興味がありお時間をいただきました。ありがとうございます。今日はiOS 8が夜中にリリースされてそれで遊んでいたので寝不足です。よろしくお願いします。

『箱庭』編集長・東出 桂奈さん ウェブマガジンから派生した書籍『 箱庭がつくる ほっこり雑貨手帖』なども展開。

『箱庭』編集長・東出 桂奈さん
ウェブマガジンから派生した書籍『 箱庭がつくる ほっこり雑貨手帖』なども展開。

東出:そういえば出てましたね。こちらこそよろしくお願いします!

大野:さっそくですが、『箱庭』の編集長はいつなられたんですか?

東出:『箱庭』の立ち上げ時に編集長になりました。元々は編集の仕事をしていたわけじゃなくて、デザイナーでした。ライターや編集者として活動していたのではないので特殊なパターンだと思います。今まで紙のデザインをやっていて、ウェブに移ってきたという感じです。

自分はデザイナーだと思って編集長をやっているので、いわゆる「紙メディアでバリバリ言わせてた編集長」という感覚では無いですね。

大野:『箱庭』は2012年にスタートしたんですよね?

東出:そうです。今の会社に入ってからウェブのデザインをやっていたんですが、4年前にSNSが流行り始めたときに社内でTwitterとブログで発信していこうとなったのが『箱庭』立ち上げのきっかけでした。

私自身がSNSやブログが好きで個人的に発信していたものに会社が協力をする形で、ちゃんと名前を出し始めたんです。それをやってるうちに、段々と周りの人から「見てるよ」という声を聞くようになって……。誰も見てないと思ったら意外と見られてました(笑)。

なんとなく男性の方が見てるのかなと思ったら、女性の声も多かったので、社内で「じゃあ女性向けのメディアを立ち上げてみようか」ということになったんです。

それで色々役立つ情報だったり、デザインの面白い情報を集めてやってみようと形になったのが『箱庭』の原型です。だから、私『箱庭』やります! みたいな感じではなくて、自然とそうなっていった感じですね。

大野:女性クリエイター向けのメディアって他にないですよね?

東出:そうなんです。あったとしてもアニメとかですかね。

女性向けメディアだと美容とか煌びやかなメディアが多くなってしまいがちですけど、『箱庭』は立ち上げる時に、仕事してるクリエイターの息抜きや刺激を与えられるメディアになりたいと考えてました。で、よくよく見渡してみると、女性クリエイター向けのメディアがなかった。だから「他にないから作っちゃった!」という感じです。

専任は私一人。無理はしないで、ゆったり運営するのが強み

大野:今は何人体制でやってらっしゃるんですか?

東出:今はウェブデザイナーが2人、編集者が一人、エディトリアルデザイナーが2人の計5人でやっています。私だけ『箱庭』専任でやっていて、他の者はウェブ制作などをやっています。

大野:へぇー専任一人はすごい! 『箱庭』を拝見していると、広告枠もないようですし、ゆったり運営している感じがしますね。

東出:全く無理してないです(笑)。

『箱庭』の収益でいうとEC事業と「箱庭のガッコウ」というスクール事業があるんですが、専任が私一人でミニマムに運営していますし、他のメンバーは日頃、他の仕事をしていますからね。広告やタイアップを無理してやらなくていいのが『箱庭』の強みです。

だから、広告のお話が来ても、相性がよい内容のモノだけをやらせて頂いています。例えばタイアップでも、記事を書いた対価としてお金ではなく家具と物々交換したり。やりたいことがあったからご一緒させてもらうというパターンが多いですね。自由にやっているので私はものすごい楽しいです(笑)。

大野:おお、自由だ(笑)。記事ってどれくらいの頻度で配信されてるんですか?

東出:記事配信数は決まってないです。イベントや展示会情報などは決めてますが、できるときにやるという感じです。Facebookページは毎日上がるようにしていて、土日は休みですよーっていう会社みたいな感じにしてます。
 

女子クリエイターのためのライフスタイル作りマガジン『箱庭』

女子クリエイターのためのライフスタイル作りマガジン『箱庭』


 
 
こんな感じで、臨機応変に出来る範囲内で無理なく運営しています。本当は毎日何記事も上げられたらいいんですけどね。

大野:無理しない感じ、いいですね。ブログやってる風で好感持ちます。ちなみに記事を作る時のポイントって何かありますか?

東出:背伸びをしないことですね。あとは、実際に見た率直な感想を出すことだったり、失敗した例をそのまま出したり、友達に話しかけるようなスタンスで書いてます。私自身が元々編集者ではないので、よく見せるために記事を出すとかできないんです。

おもしろいものは、おもしろいまま伝えるから熱量とか伝わってきますし、それが出ちゃってるほうが人間っぽくていいと思うんですよね。今は自分の主観で書くメディアさんが増えていたりしますけど、昔ながらのライターさんって自分を出さないじゃないですか。私は逆に「あっ、この人熱くなっちゃってるよ」みたいなのを見たいです(笑)。

大野:おもしろいものはそのまま、主観で書く、熱量が大事などなど、僕がギズモードやってた時と同じ言葉ばかり出てきます(笑)。運営する上で譲れないポイントってありますか?

東出:うーん……、嘘がないってことですね。あとは誰かを傷つけないようにするとか。

大野:嘘ってすぐバレますもんね。

東出:そうです、嘘はよくないです。『箱庭』は女性のクリエイターのためにやってるんで、その方たちの刺激になるようにとか、でも刺激ばっかりでも疲れちゃうんで息抜きできるように考えますし、仕事以外のところで楽しめることも発信してます。

テーマがライフスタイル全般なので、忙しい中でも時間作ってこんなことやってますとか、これくらいだったら毎日取り入れられるかもとか、通勤の道をちょっと外れてみるという情報も出しています。ちょっと寄り道する感覚は大事ですね。

ちなみに、こういうことをやってると、『箱庭』に癒やされるって言われることも増えます(笑)。

大野:僕は男ですが癒やされますよ(笑)。

東出:癒やすためにやってるわけじゃないんですけどね(笑)。

これからもノビノビ発信していきたい。

東出発信者と受信者が全く同じ層なので、リアルな雰囲気を醸成してるのかなと思います。ほんとに興味が無いマイナーな情報も出しますし、これ出したら共感してもらえるかなっていう予想の元にアップするのも面白いです。意外なものでウケることもありますね。

大野:意外なものって例えばどんなものでしょう?

東出:たとえばアーティストの星野源さんを、好きな人いるんだろうなぁ〜って出してみたら、みんなから「好きです!」って反応があったり。あとは、モンドくんっていう絵を描く小学生の男の子がいるんですが、個人的にすごいおもしろいと思って出したら反応がよくて、こういうのみんな好きなんだなと思いましたね。

大野:ネットあるあるですね。これから将来を見据えた計画とかあるんですか?

東出:今は空間プロデュース系の企画を進めていて、これから発表になります。ウェブだけじゃなく形あるものに挑戦してますね。『箱庭』を見てくれるクリエイターの方って仕事で疲れてる人が多いので、ちょっとでも楽しくなれることをやっていきたいですね。

そういえば、以前大阪のバス会社さんとコラボして、「箱庭のガッコウ」で大阪と直島へ行くっていう企画をやっていて。瀬戸内海のアートの島っていうのがあるんですが、そこでカメラで写真撮りながらバスで周るっていうのをやったんです。そういったリアルな展開を今後もやっていきたいですね。

大野:話を聞いていると『箱庭』から感じるやわらかさが増しました(笑)。最後に、これだけは言っておきたいことってありますか?

東出:『箱庭』って普通の会社じゃできないと思います。会社がお金取ってこーい! っていう感じじゃないですし、やりたいことをやってます。

私も『箱庭』があるからこの会社に来たというわけじゃなくて、普通の生活があって、突然こういう形になって(『箱庭』が)生まれたというのが驚きなんですけど、いろんな所にイノベーションの可能性があると思うんです。当たり前と思って過ごしていても、当たり前じゃないことが急に起きたりする可能性があるから、みんなもっと自分の好きなことを話した方が、おもしろいことって生まれるんじゃないかと思ってます(笑)。

これからもノビノビ発信していきたいですね。

メディア運営と編集は切っても切り離せない関係にあるもので、コンテンツを読者へ伝えるために「編集者」は重要な職種だと改めて感じました。はい。

今回お話を聞いた『箱庭』の東出さんは、編集を経験したことがないということでしたが、いわゆる紙の編集が、ネットの世界において必ずしもその知見が活かされるわけではなく、多様性が認められるネットでは誰もが編集者になり得るんだなと思うところです。

というのも、インタビュー中に出てきたキーワードにそれが表れてるんですよね。

「背伸びをしない・率直な感想・友達に話しかけるスタンス・おもしろいものはおもしろいまま出す・熱量を見せる・主観を出す」

つまりは素を出すという点に落ち着きますが、これらのワードはネット系編集者特有のものです。特に読者寄りの編集者さんの口からよく聞きます。

うーん、ということはネットで編集をやる適性があるのは「素人寄り+特定ジャンルが好き」といった特性を持った人なのかなと思いますが……。そんな伏線をさくっと残しつつ、次回は「どんな人がウェブ編集者に向いているのか!?」というテーマで記事をお届けしたいと思います。

それでは!!

バックナンバー