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[PR]東京の自然体験の魅力を伝えるプロジェクト。「Nature Tokyo Experience」とは?

2017年度に東京都が実施した、多摩・島しょ地域を舞台に自然を活用し、新たな体験型エンターテインメントを創出する「Nature Tokyo Experience」。このプロジェクトは、民間事業者からアイデアを公募し、選定されたものを支援していくという取り組みだ。実際に事業化されたアイデアはどれもが新しい東京の楽しみ方を示し、コンセプトである「東京の自然でできる体験が今、おもしろい」を体現するものだった。

そんな「東京の自然」の魅力を感じることができるモデルプロジェクトの報告会が、代官山T-SITE GARDEN GALLERYにて開催された。実際にプロジェクトを成功に導いた3社や関連する自治体が登壇。その他、東京の自然を活用した新たな取り組みに興味・関心を持つ企業、自治体の関係者ら約90名が来場した。CINRA.JOBでは、「Nature Tokyo Experience」の広報をサポート。当イベントの様子をレポート形式で紹介したい。
  • 取材・文:加藤将太
  • 撮影:豊島望

報告会は「Nature Tokyo Experience」を推進する東京都 政策企画局 戦略事業担当部長 田尻貴裕さんのスピーチからスタート。田尻さんは「“体験型エンターテインメント”とは役所から縁遠い言葉。奥多摩や島しょの豊かな自然を、実際に訪れて触れていただくことは容易ではありません。この大きな課題に挑戦するために、既存の枠組みを超える取り組みを行っています」と、このプロジェクトが行政にとってまったく新しい挑戦であることを強調した。

東京都 政策企画局 戦略事業担当部長 田尻貴裕さん

東京都 政策企画局 戦略事業担当部長 田尻貴裕さん

東京の自然を快適に味わうグランピングプロジェクト

では、実際に事業化されたモデルプロジェクトを紹介していこう。まずは株式会社NOX Intervillageが2018年3月に西多摩郡奥多摩町にて本格始動させる「Circus Outdoor TOKYO」だ。

NOX Intervillageはグランピングイベントを全国各地にて開催してきた。最終目標は「東京の森に世界で一番美しいアウトドアフィールド」を築くことであり、今回の奥多摩町に初の常設施設となる「Circus Outdoor TOKYO」の開設に至った。

事業化に向けて、2017年4月からロケーション調査を開始。CEOの石山学さんは「都心からのアクセス・景色の良さ・豊富なフィールドといった条件から候補を絞ると、それらが揃っていたのが奥多摩町でした。地域住民の皆さんへの説明会などでコミュニケーションを重ねた結果、奥多摩町と東京都のご協力を得て、事業開始できた」と、その変遷を明かす。

NOX Intervillage 石山学さん

NOX Intervillage 石山学さん

プロジェクトを進めるうえで困難も伴った。5つの宿泊用テントは奥多摩湖を眺望できるレイクビュー。宿泊者用の飲食施設や浴場も併設予定だが、国立公園内という立地上、施設を作るために樹木の伐採は難しい。石山さんは「関係各所と打ち合わせを重ね、やっとの想いで森の中にキッチンやトイレを作ることができました」と苦労を振り返る。

1月にはプレオープンイベントを開催。利用客の反応から、ここが東京であることを忘れてしまう特別な時間を提供できるという確信を得た。認知度も上がってきた一方で地域が抱える課題も浮き彫りに。たとえば現地雇用について。奥多摩町は人口の49%が65歳以上の高齢者、16歳以下は6%と、20~30代が極端に少ない。町としても少子高齢化の対策に重点を置いている。

「奥多摩にみんなで住んでみるというプロジェクトの発足を考えています。あわせて施設の拡充も検討していき、日帰りの方でも楽しめる施設を増設していけたらと。今はインターネットがあれば、どこでも仕事できる時代なので、森の中で働くスタイルも提案していきたいです」

まだスタート地点に立ったばかりではあるものの、東京でのグランピング体験がより良い観光スポットに発展していくことに期待したい。

多摩地域と島しょをつなぐ、ガストロノミーツーリズム

続いての発表は、株式会社USPジャパンが調布市と府中市、神津島と新島にて2017年7月から着手している「TOKYO ガストロノミーツーリズム」だ。

USPジャパン エグゼクティブプロデューサー 横澤武留さんは、「ガストロノミーツーリズムとは、食を通じてその土地の文化歴史と料理の関係を学ぶというコンセプト。訪日外国人の約7割が食を旅の目的にしており、欧米でも人気の旅スタイルがガストロノミーツーリズムであることから、日本でも需要の高まりが期待されています。多摩・島しょ地域は、東京とは思えない豊かな自然があり、島ならではの新鮮な食材や食文化があるなど、そのポテンシャルが高いんです」と、事業立ち上げの背景を説明した。

USPジャパン エグゼクティブプロデューサー 横澤武留さん

USPジャパン エグゼクティブプロデューサー 横澤武留さん

東京独自のガストロノミーツーリズムを立ち上げるため、多摩・島しょ地域を繋ぐ(一財)調布アイランドの事業と連携しながら、新島や神津島へ赴き、食材を収穫・調理して食べる体験プログラムを企画。神津島は調布飛行場から約35分というアクセスの良さも魅力のひとつだ。また、伊豆諸島から調布飛行場に空輸された朝採れ野菜や魚などを多摩地域で調理して食べるイベントも企画してきた。

7月から島を愛する作家・椎名誠さんをスペシャルサポーターとして起用し、「島はうまい!」をテーマに都内の離島で採れる食材を使った調理方法やレシピ開発などを地域と連携しながら、ほぼ毎月全7回にわたって企画した。台風の影響によるイベント中止など集客面で悔しい経験も。これまでの成果と今後の展望について、横澤さんは次のように語る。

「人と人を繋ぐ可能性の確信、日本独自の食体験の伝達、地域の食文化との異文化交流、地域の活性化が成果として得られました。今後は、ほかの東京の島々のプログラムも企画・実施していきたい。農家・飲食店・宿泊施設・消費者をつなぐサービスも形にしていけたらと」

時代の移り変わりとともに変化は付き物だが、食は不変で、いつの時代も地域の特色が表される。『TOKYO ガストロノミーツーリズム』には、そういった地域の差別化を提示していける可能性が満ちている。

八丈島での体験を、気軽でラグジュアリーなものに

報告会は終盤へ。最後の発表は、株式会社アカツキライブエンターテインメントが2018年2月に東京都八丈島にて本格スタートさせた、「星降るプレミアムデッキ」と「島コンシェルジュ」である。

「星降るプレミアムデッキ」は1日1組限定で星空観察ができるスポット。360度を透明なシートで覆ったテントが用意され、冬でも寒さを凌ぎながら星空観察ができるというものだ。「島コンシェルジュ」は島での遊びや食事、宿泊といった疑問にチャットサービスを通じて答えてくれるというサービス。予約・決済も行うことができる。

アカツキライブエンターテインメント執行役員小谷翔一氏は、「八丈島の地域活性事業に関わり、何度も島を訪れてきました。そのなかで、八丈島の豊富な地域資源を目にして、それを知らなかった自分が恥ずかしくなりました。八丈島は羽田空港から55分程度の好立地で、ウミガメ見学やホエールウォッチングを体験できる。ガイドブックでは伝わらない多くの魅力を活かせるはずだと考えました」と、事業のきっかけが自身の気づきに遡ることを明かした。

アカツキライブエンターテインメント執行役員小谷翔一さん

アカツキライブエンターテインメント執行役員小谷翔一さん

「星降るプレミアムデッキ」と「島コンシェルジュ」のプロジェクト趣旨は、島での体験をよりラグジュアリーに、気軽にしていこうというものであり、自然環境という普遍的な価値の見え方・楽しみ方を重視している。固有の価値を伝えるというアプローチにおいて、小谷さんは地元住民・関係者との関係構築が推進力になったと指摘する。

「『星降るプレミアムデッキ』はリードパークリゾート八丈島というホテルの敷地内に作らせていただきました。そちらの土地をお借りして、私たちがプロデュースするという相談自体が無茶な提案でしたが、何度も島を訪れて、自治体の方を中心に仲立ちしていただいたことが大きかった。今後はアクティビティ事業者や旅行会社と連携し、冬場の増客、インバウンド、雨の日などの対策を強化していきたい。八丈島は行くたびに新しい発見があり、友達を案内したいと思うほど楽しい場所がたくさんあります。そういう場所を今後一つでも増やしていきたいですね」

今後は、地元の八丈島乳業や南青山のチーズレストラン DAIGOMIとのコラボレーションを予定しているという。新たな内と外の人々による化学反応が早くも楽しみだ。

モデルプロジェクトの報告は以上で終了。報告会の来場者に「Nature Tokyo Experience」先進事例集が配布された。この事例集は、先の3プロジェクト以外にも、他の地域における先進的な取組事例をまとめたもの。埼玉県、山梨県、愛知県にて開催されてきた「夜空と交差する森の映画祭」をはじめ、新たに事業を始めようとする際のヒントとなる事例が、国内だけでも多数存在することを示した。

その後は、モデルプロジェクト事業者と来場者の交流会ネットワーキングへ。来場者からは「各プロジェクトはスタートしたばかり。これから2,3年後に真価が問われると思う」などの意見が飛び出し、積極的な交流が行われていた。

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こうして、約90名が参加した「Nature Tokyo Experience」モデルプロジェクト報告会は幕を閉じた。東京の自然の価値を顕在化させるとともに、新しい体験の時間を提供していく。3つのモデルプロジェクトの今後に期待しながら、各地域においても、新しく楽しい事業が続々と生まれてくることを願いたい。

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